起業直後でも消費税が免除されない?インボイス制度の影響

起業直後のよくある勘違い

最近、当社に寄せられる「新規起業」や「法人設立」のご相談で「消費税免除のルール」と「インボイス制度」の関係に誤認が見られる事例が多く見られます。

起業を検討されている方にとって「起業後、最初の2年間は消費税が免除される」と認識されている方は多いのですが、それがインボイス制度によりどのような影響が生じるのか、本投稿にて整理します。

インボイス開始前:消費税の納付ルール

まず、インボイス制度開始前の消費税の納税義務は、端的に言ってしまえば「基準期間の課税売上高が1,000万円超」の場合に発生します。

基準期間とは、原則として2期前(2年前)のことをいい、起業から2期以内はこの基準期間が無いことになるので、消費税の納税が免除されるというロジックになります。(消費税法9条)
「最初の2年間は消費税が免除される」との認識が一般的なのは、このルールが比較的広く周知されているところによると推察されます。

また、課税売上高が3期目以降も続いて1,000万円以下であれば、引き続き消費税の納税義務が免除されます。従って、小規模に事業を実施しているフリーランスやマイクロ法人などは「起業後ずっと消費税が免除されている」というケースも多くあります。

※例外的に設立2年以内であっても消費税の納税義務が免除されないケースもありますが、小規模な事業者があてはまる事例は多くありませんので、詳細は本稿では割愛します。

インボイス開始後:起業後は2年間の消費税免除があるはずが・・・

インボイス開始後も、消費税の納税義務に関するルールに変更はありません。従って、基準期間がない起業後2年間は原則として納税義務が免除されます。

しかし、起業直後であってもインボイス制度は適用されるため、納税義務が免除されるからといってインボイス登録を行わないでいると「得意先が消費税の控除が受けられなくなる」というデメリットが生じてしまいます。

そのようなデメリットを避けるため、起業時にインボイス登録を行うと、「起業直後であっても消費税の納税義務が発生する」ことになります。

この「消費税法の納税義務の免除」と「インボイス制度による納税義務の負担」の関係が複雑であるため、冒頭で記載した起業予定者の誤認につながっているものと推察されます。

個人事業 × 法人の二刀流が増える?

特に、BtoB事業で起業すると、得意先の多くは一定以上の規模があり、消費税の納税義務があることが想定されるので、インボイス登録を行わないと「新規顧客の獲得」や「取引価格の交渉」及び「自社の信用力」といった面で不利になることが予想されます。

このため、顧客が「一般消費者(BtoC)」と「一般企業 (BtoB)」がミックスされている事業を行っている場合などは、「B to C事業は個人事業主として」「B to B事業は法人として」実施し、BtoC事業の方はインボイス登録を行わない形態が増えることも予想されます。(個人事業主・法人の組み合わせはその逆のパターンも考えられます)

個人事業と法人を兼業する、いわゆる二刀流といわれる手法です。

ただし、二刀流は申告負担が増えますし、事業分割や経費按分などの合理性の問題も生じますので、デメリットもあります。

個人的にはインボイス制度に「新規開業特例」を設けて、起業後しばらくはインボイス登録を行わないでいても得意先側で消費税の控除が制限されないルールを設けることが、新規起業を阻害しない手法だと考えていますが。。

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